「お客様の声に、もっと応えたい」──大和証券AIオペレーター開発の舞台裏
2025.08.12- AI活用
- 省人化


こんにちは。ヘッドウォータースコンサルティング(以下、CON)でAIソリューション開発の推進を中心に行っている茂田井です。
今回は、私たちが開発を担当した「大和証券AIオペレーター」について、プロジェクトの裏側や工夫した点、そして得られた成果についてご紹介します。
「AIオペレーター」のご利用ガイドより
解決すべき課題は「待ち時間」と「対応力」
大和証券様のコンタクトセンターでは、日々多くのお問い合わせが寄せられています。しかし、オペレーターの人数には限りがあり、特に混雑時にはお客様をお待たせしてしまうことが課題となっていました。また、24時間対応が難しいこともあり、利便性の向上が求められていました。
そこで、AIオペレーターの導入によって、「いつでも待ち時間0」を実現することが本プロジェクトの目的でした。
チーム体制とHWCの役割
このプロジェクトは、大和総研様、日本電気様、Quick様、そして私たちHWSグループという複数社の連携によって進められました。
HWSグループはプライムベンダーとしてコアエンジンの開発を担い、その中でHWCは、主に以下の領域を担当しました。
- 業務理解と要件整理
- 対話フローの策定
- データの精査と文言調整
- プロンプト設計とチューニング
- テスト計画の策定と推進および実施
業務を深く理解するため、実際にコンタクトセンターに伺ってオペレーターの方々にお話を伺ったり、新人オペレーター研修を受けたりすることで、業務担当者目線を身に付けるところから始めました。
開発の工夫と苦労
開発期間は約5か月と短期間でしたが、アジャイル手法で「作っては試す」を繰り返し、精度を高めていきました。
FAQの整理では、700件以上のデータをひとつひとつ確認し、画面越しで文字を見るのではなく、電話越しで音声として聞かれることを前提としたUXの実現のため、文章を短く・わかりやすく調整しました。また、生成AIの誤回答(ハルシネーション)を防ぐための工夫も重ねました。
さらに、100人以上のオペレーターによる1万件規模のテストを実施し、フィードバックをもとにプロンプトやデータベースを何度も修正しました。HWCだけでも精度向上に10人以上が関わり、最終的には回答精度95%以上を実現しました。
AIオペレーターの仕組み
「自分事としてやり切る力」が信頼につながった
本件はお客様の資産形成に影響を与える可能性があるサービスであるため、リリースには極めて高い精度の実現が求められました。少しずつ精度が上がる手応えを得ながらも、リリース直前に「デグレ(性能劣化)」の発生など、緊張感のある場面もありました。しかし、HWSグループ全体で総勢116人が一斉参加した負荷テストや、日々のチューニングによる精度向上などを通じて、予定どおりのリリースを実現することができました。大和証券様からは、愚直に「自分事としてやり切る力」をご評価いただき、HWSグループへの信頼感を高めていきました。結果的に、リリース後には「国内大手金融機関初のAIオペレーターの実現」としてニュースにもなり、またその後の別プロジェクトの実現にもつながりました。
最後に
今回のプロジェクトを通じて、「お客様の業務を深く理解し、AIソリューション導入を自分事としてやり切ること」の大切さを改めて実感しました。今後も、現場に根ざしたプロジェクト推進を通じて、より良い顧客体験を創出していきます。
■リンク
- 大和証券と協働し、AIオペレーターを開発 ~ 生成AI活用による顧客体験(CX)変革を実現 ~ - 株式会社ヘッドウォータース
- 大和証券、「AIオペレーター」開発 金融機関では異例のAI活用 半年間のプロジェクトを追う - ITmedia AI+